001:Rainy days never stay.サンプル

【Side:Ryuji】
 リーダーと喧嘩をした。
 我ながらカッコ悪いとしか言いようがない。もっと懐の広いところを見せたいのに現実は真逆だ。なんでうまく行かないんだろう。最後に見たあいつの表情が忘れられない。傷つけてしまった。
 困っている奴を放っておけない正義のヒーローみたいなあいつのことが好きで、隣を走っていられるのが嬉しかった。俺があいつを頼るように、あいつも俺を頼ってくれる。だけど、いつ頃からかそれだけじゃ満足できなくなり、憧れとか信頼とか友情とかそういう名前では呼べない感情を抱くようになった。いろいろあって、幸いなことに俺のその気持ちはあいつに受け入れられた。あの時の叫び出したくなるような衝動は今でも忘れられない。
 大事にしようと思った。誰かに守られるだけの奴ではないけど、守りたいって思った。こいつにはカッコ悪いところは見せられないと気合も入った。
 そこからはもうなんていうかピンク色の日々だ。恋人になるより前からいろいろ遠慮がなくなっていたから、初めのうちこそ慎重に触れ合っていたものが徐々にいつもの調子になり……といっても友人だったときにはしなかったような類のことをやりまくった。
 夏休み。学校がなく、怪盗団の活動も双葉の回復待ちで保留。つきあいたての恋人(!)同士がするっていったらそれはもうあれしかない。あいつはあいつで意外と積極的で、止める奴といったら俺らのことを唯一匹知っているモルガナぐらいなものだったけど、馬に蹴られたくはないと適当なところで二人きりにしてくれた。
 そんな感じでやや爛れた夏休みを過ごし、休み明け早々には修学旅行でハワイへ。同室なら最高だったがクラスの壁は厚かった。三島や仲間たちには、彼女いなくて寂しいわーという体を装いつつ、自由行動を二人きりで過ごすことに成功した。海で泳ぎ現地のグルメを味わい、さらには……いい旅行になった。
 問題はそれ以降だ。そこからぱたりと二人の時間がなくなってしまったのだ。
 何かと忙しい9月ではあったが、忙しいのはその時に始まったことじゃない。パレスだメメントスだ、テストだとなにかとバタバタしている時でもあいつは息抜きだといっては俺に声をかけてきて、出掛けたりトレーニングしたりして過ごしたものだ。だが、今は仲間も増え、外部の協力者も増えたらしいからあの頃より大変なのかもしれない。
 だが、俺の勘がそれだけじゃないと告げている。有り体に言えば、避けられている気がする。気がするというのは断言したくないからであって、この想像はかなりいいところを突いていると思う。以前ならば、放課後は一緒に過ごせないまでも、休み時間やちょっとした時間でも顔を合わせればくだらない雑談をかわしていた。今だって二言三言の会話はあるから、嫌われているわけではないにしてもおかしい。時々廊下から教室を覗くと机に突っ伏して寝ている姿が見えたから、本当に忙しくて疲れて余裕がないのかもしれない。だとしても、本当にそんなに疲れているのなら、そういうときこそ頼ってほしい。俺のことを頼りにしているという言葉が本心からのものだというのなら。
 そんな頃だった。
 一時期と比べればあいつのふざけた噂の数々は下火になっていたものの、残念ながら一部ではしぶとくネタにされていた。大半はちょっとしたネタが何倍にも誇張されていて、あいつを知ってる奴が聞けば呆れ果てるに違いないくだらなさだ。
 その中の一つに、女をとっかえひっかえしており、見るたび違う女と歩いている。杏や生徒会長、他校の制服を着た美人、明らかに年上の知的な美女……。若干羨ましい気持ちがないでもない。
 真に関しては俺も知っている。頼まれて恋人のフリをすることになったと。聞けばそういう役を頼まれることがしばしばあるらしい。あくまでフリであり、そういった事実はないから誤解だけはしないでほしいと先に念押しされている。あまり褒められたことではないが聞かされたときはかなり嬉しかった。あいつにとって俺が特別である証拠だと。その時は。
 今は少しだけぐらついている。他校のすげー美人といい雰囲気で歩いているのを見ただの、いかにも妹系なかわいい女の子とべったりくっついて歩いていただの。どう考えても双葉な情報でも気分がささくれている俺としてはそんな誤解されるような行動してんじゃねーよと少し苛立った。
 怪盗団人気は絶好調、支持率はうなぎ登りでやっとこれまでの苦労が報われようとしている。廃人化事件の犯人のことは気がかりだが、それも春の父親が改心すれば手がかりは掴めるだろう。春からの連絡を待つ時間は少しもどかしい。
 こういう空いた時間、これまでであればあいつから声がかかって遊びに行ったりしたんだよな……。こうやってただ待つだけというのは面白くない。面白くないがしょぼくれて待ちの姿勢でいるだけというのもカッコ悪いし、疲れているのなら休むように忠告ぐらいはしたほうがいいだろう。そう決意して、何度か遊びに行かないかと誘いをかけてみた。しかし反応はイマイチでリーダーお得意の既読スルーだ。悪気がないのは知っているがもう一歩レスポンスが欲しいところだ。チャットだけでなく、帰りがけのあいつを廊下で呼び止めて直接尋ねたこともある。返事は「もう少し落ち着いたら」とつれない。急いでいるからとそのまま行ってしまい、続けて聞きたかった問いかけは飲み込んだままだ。
 もう少しってどれくらいだ、落ち着いたらってどこまでのことだ。協力者のことなのか、奥村のことなのか。改心が成功して廃人化事件に関する情報を聞き出せたらなのか。わからない。
 一人でうだうだ考えるのは性に合わない。ここ最近の俺はらしくもなく頭を使いすぎた。考えてもわからないんだから、もうカッコ悪いのは承知の上であいつとじっくり話をしよう。今日は地下モールの花屋でバイトの予定だと、杏から聞き出した俺はとにかく食らいついて行こうと決めた。













R-18 サンプル

※主人公名出てます。

 身体は疲労を訴えているのに、わいてくる欲を押しとどめることができない。この場所の空気がそうさせるのだろうか。組み敷いた恋人は肩で息をしているというのに。
「やだ、も、無理…っ」
 圭は肩を押し返してなんとか逃げようと身を捩るもが、体勢の不利さに加えて今は身体の力が抜けきっているため簡単に捕まってしまう。背後から抱きかかえられ、そのままうつ伏せに寝かされる。
「なんで、嫌だ、こんな格好やだって」
 この体勢は、何度か試みようとしては圭が抵抗して実現できなかったものだ。顔は見えないのは嫌だと圭は言うが、竜司に言わせればその分だけ身体を密着させられるのが良い。肌を合わせるのはとても気持ちが良い。今はお互いに着衣のままではあるが。
 圭の制止の声を聞き流し、コートをめくりあげると黒の布地に白い肌が眩しい。太股までどちらのものともつかない体液がつたっている。淫靡な光景に唾を飲み込む。これ以上の抵抗をされないうちに再び内部へ進入すると、そこは待ちかねていたように竜司を受け入れ熱く包み込む。
「ひぅっ……あっ、ああ……」
 反射的に逃げを打つ腰を掴み引き寄せ繋がりをより深いものにする。内で吐き出した白濁がかき混ぜられる粘着質な音が耳に毒だ。そのまま圭の弱い部分を先端で刺激すると背をのけぞらせて一際高い声で泣く。
 目の前の色づいた項を汗がつたう。引き寄せられるように口づけ、舐め、噛みつく。
常になく乱暴な扱いを受けているのに、圭は痛みの中に快楽を見出している己に気づく。
「ああっ」
「……っ!」
 連動するように内部がきつく締まり、竜司も息を詰めてやり過ごす。
「はっ……や、だって、いって、るのに……ううっ」
 素直な身体の反応とは裏腹に未だ気持ちが追いついていない圭の訴えはついに涙声になってしまった。
滅多なことでは見られない姿に、さすがに罪悪感がよぎるが、同時に酷く興奮している己がいるのに竜司は気づいてしまう。まずいと思っているのに、更に泣かせてしまいたいという衝動を止められず、衝動のままに赤く染まっている耳朶を舐めあげる。
「ごめん、止めてやれねえ」
 お前のこと欲しくてたまんねえ。
 常の竜司であれば、ここまで抵抗された時点で手を緩めてくれたはずなのに、緩めるどころか煽る結果になっているのが圭には信じられなかった。